J-PARC muon g-2/EDM experiment

Overview

多くの実験事実と、数学的な整合性を基盤に築き上げられた素粒子標準理論は、様々な素粒子現象を定量的に説明する極めて堅牢な理論です。しかしながら、近年の研究により必然的に素粒子標準理論を超える新しい物理法則(新物理)の存在が要請されています。ミュオンの異常磁気(双極子)能率(g-2)は素粒子標準理論において極めて精密に計算することができます。先行研究では、20年前よりその測定値が予想値よりも大きい兆候が示唆され 、素粒子物理学上の重要な未解決問題となっています。2021年、米国では従来の方法で行った新しい測定結果が発表され20年前の実験と矛盾しないという結果が報告されました。

大強度陽電子加速器施設 J-PARCの全景

我々はJ-PARCで大強度陽子ビームの特徴を最大限に生かし、新しい実験技術と組み合わせることにより、従来とは異なる研究手法によりg-2および電気双極子能率(EDM)の超精密測定を行っています。ミュオンを冷却・加速することにより世界初の低エミッタンスビームを実現し、従来の20分の1のサイズの実験装置を用いて超精密測定を行います。

ミュオニウムのイオン化に用いる大強度真空紫外レーザーシステムの開発
大強度ミュオンビームが供給されるMLF H1実験エリア
MLF S2実験エリアで行っているミュオニウムのレーザーイオン化実験の様子
ミュオンを光速度の約10%まで加速するRFQ加速空洞の実機
低エネルギー電子ビームによる3次元らせん入射試験のビームラインとミニソレノイド
ミュオン蓄積磁石・磁場測定装置の開発に使用している超伝導MRI磁石
陽電子飛跡検出器の読み出し電子回路の製作に用いるワイヤーボンディング装置
陽電子飛跡検出器の姿勢を精密に監視するための光周波数コムを用いた精密アラインメントモニターの開発

我々の実験の特徴は、低エミッタンスビームに加えて、3次元らせん入射・極めて一様性が高い蓄積磁石・高安定度飛跡検出器等の新技術を駆使して、従来と全く違う手法で測定することが特徴です。これによりg-2に新物理の効果が見えているのかに決着をつけるとともに、EDMを世界最高精度で探索し素粒子の時間反転対称性の破れを研究します。