J-PARC muon g-2/EDM experiment

R&D

表面ミュオンビームライン
  • 物質・生命科学実験施設第1実験ホールの様子表面ミュオンビームを輸送する2つのビームライン、Hライン(左側)・Sライン(右側)が整備された。ミュオンg-2/EDM実験はHラインを用いて行われる。2020年撮影。
  • 2021年夏期の建設期間中に撮影したHライン基幹部の写真 写真右側から左側に向かってミュオンビームが輸送される。運転期間中は放射線防護のためビームライン全体がコンクリート遮蔽で覆われている。
  • H1エリアのビームポートとビーム形状検出器Hラインは2022年1月より稼働を開始し、H1エリアまでのビーム輸送に成功した。
    2022年1月撮影。
  • H1エリアまで輸送された表面ミュオンビームのビーム形状ビーム強度やビーム形状を最適化するための調整を行い、冷却ミュオン源へ接続する。2022年2月撮影。
冷却ミュオン源
  • シリカエアロゲルのレーザー穴加工の様子シリカエアロゲルに表面ミュオンを静止させると電子を捕獲してミュオニウムが生成する。レーザー穴加工を施すと真空中に湧き出るミュオニウムの数が飛躍的に向上する。
  • カナダTRIUMF研究所でのミュオニウム生成率測定実験の様子高品質な連続ミュオンビームを用いて、30種類を超える生成標的候補の試験を行い、最適な条件を決定した。
  • J-PARC D2実験エリアでのミュオニウム生成率測定実験の様子TRIUMFで行った結果に基づいて選定した標的がJ-PARCのパルスミュオンでも予想通りの生成率が得られることを確かめた。
  • KEKつくばキャンパスで開発しているミュオニウムイオン化用レーザーの様子パルスレーザーを用いてミュオニウムから電子を乖離させることにより、熱エネルギー(室温)まで減速されたミュオン源をつくる。
  • J-PARC S2実験エリアで行っているミュオニウムのレーザーイオン化実験の様子予想通りの効率でミュオニウムのレーザーイオン化ができるか確かめる。岡山大学・KEK物質構造科学研究所と共同で進めている。
  • 標的ホルダーに実装されたミュオン冷却標的(シリカエアロゲル、中央開口部)冷却された超低速ミュオンを後段に輸送するため、ホルダー開口部にメッシュ電極が取り付けられている。
ミュオン直線加速器
  • ミュオンを光速度の約10%まで加速するRFQ加速空洞の実機この加速空洞の試作機を用いて、2017年に世界で初めてミュオニウム負イオンのRF加速に成功した。
  • ミュオンを光速度の約10%から30%まで加速する交差櫛型加速空洞(IH-DTL)の試作器組立時の写真5つのチューブが上下方向から支えられ、チューブの間に生じる電場でミュオンを加速します。試作機の試験は完了。試作機の約3倍の長さの実機を製作する。
  • ミュオンを光速度の約30%から70%まで加速するディスクアンドワッシャー結合空洞加速器(DAW-CCL)の試作器アルミ製の試作機試験は完了。銅製の実機を製作する。
  • 加速ミュオンビームを測定するMCP(マルチチャンネルプレート)検出器名古屋大学で開発された高速読み出し回路に接続して、ビームパルスの時間分布を精密に測定する。
  • 加速ミュオンビームの分布を測定するシリコンピクセル検出器の試作機センサーはSOI技術をもちいてKEK独自に開発されたものである。ミュオンビームを照射する試験を行い16ミクロン角のピクセル群でミュオンを1個から検出できることを確かめた。
ビーム入射装置
  • 低エネルギー電子ビームによる3次元らせん入射試験の実験装置3次元らせん入射試験用磁石(奥)にパルスキッカーコイル(手前)をインストールしている。この試験で電子ビームの磁石中での蓄積を実証する。
  • 低エネルギー電子ビームによる3次元らせん入射試験の電子軌跡ミュオンビームはミュオン蓄積磁石上部から3次元らせん入射させる。KEKつくばキャンパスでは低エネルギー電子ビームによる実証試験を行っている。
蓄積磁石・磁場測定装置
  • 蓄積磁石・磁場測定装置の開発に使用している超伝導MRI磁石鉄片によるシミングと磁場測定の組み合わせによる調整で、定められた領域に一様性が極めて高い磁場(1 ppm以下)が生成できることを示した。
  • 開発中のCW型NMRを用いた標準磁場測定プローブの写真磁場測定における測定値の絶対精度を保証するためには、磁場を高確度、高分解能で測定できる標準プローブを1台する必要がある。実験に用いる多くの磁場測定用プローブを、写真の標準プローブを用いて校正することで絶対値の測定精度0.1 ppm以下を保証している。
  • 米国g-2実験グループと共同で行っている標準磁場測定プローブの比較実験の様子日米それぞれの標準磁場測定プローブを持ち寄り、アルゴンヌ国立研究所の磁石で同じ磁場の測定・比較を行い、磁場測定プローブの不確かさを見積る。
  • NMRを用いた磁場測定プローブ開発の様子3Heを磁気プローブとして使用するためには偏極が必要である。写真は3Heガスを封入したガラスセルに高周波を印加し、放電発光させている様子。3He原子は基底状態から準安定状態に励起する。ここに円偏極したレーザーを照射することで3He原子を偏極させる。
陽電子飛跡検出器
  • ミュオンが崩壊して生じる陽電子飛跡を計測するためのシリコンストリップセンサー約10cm角のシリコンセンサーにストリップが左右にそれぞれ512本配置されている。
  • センサー信号を読み出すための集積回路(SliT128)ウエハ集積回路はこの実験に特化して独自に設計・製作した。集積回路が搭載されたウエハはチップに切り出して使用する。
  • 九州大学のシリコン検出器開発設備で行っている検出器開発の様子シリコンセンサー・読み出し集積回路の基礎特性の評価や品質保証、実装方法の開発を行っている。
  • 2021年にKEKつくばキャンパスに立ち上げたシリコン検出器組立用クリーンブースクリーンブース内は精密温調機能を有する部屋と組立機器が設置された部屋にわかれており、ここで検出器の組立・調整方法などの一連の工程の開発を行う。
  • 検出器部材を仮想的に組み合わせた検出器モジュール(クォーターベーン検出器部材は個々に開発がほぼ完了しており、今後は試作機の組み立てを行い、機械的・電気的な性能を評価する。
  • 光周波数コムによる精密測長網構築のためのガラスボールレンズの性能評価の様子電気双極子能率(EDM)の測定のためには検出器の磁場に対する角度を精密に管理・モニターする必要がある。このために検出器上に光周波数コムによる干渉計を張り巡らし精密測長網を構築する。
データ収集・解析
  • 陽電子飛跡検出器のDAQコントロールおよびモニターをするために開発中のオペレーションパネルネットワーク分散環境でデータ収集と制御を行うとともに、各センサーからのデータが正常に流れているかどうかをチェックする。
  • データ転送試験の様子実験で収集する測定データはネットワークを通じて、実験を行うJ-PARC物質・生命科学実験施設(茨城県東海村)からKEKつくばキャンパス(茨城県つくば市)の計算機システムへ転送する。
  • 陽電子飛跡検出器へのヒット信号のシミュレーションの様子ミュオンのスピン運動・崩壊、検出器応答のシミュレーションで生成した疑似データを用いて、データ解析ソフトウェアの開発を進めている。この図は25個のミュオン崩壊が同時に起きた場合で、点と曲線はそれぞれ、検出器信号とそれを用いて再構成した飛跡を示す。